楽しい本作り生活

出版社で書籍デザイナーとして働きながら、本や漫画、映画や舞台など多くのものに元気をもらっています。このブログも訪れた方が少し元気になれるような、そんな楽しい記事を綴っています。


たまに我に返ったようにデザイン話をする当ブログですが、今夜も少しデザインのお話を書きます。

この間、散歩中に飲み物を買うために利用した自動販売機に「魔法VIN Ver3.0」というステッカーが貼ってありました。普段から目にしていたし、特に気にしたこともなかったのですが、改めて見てみるとこのロゴってすごく考えられた良いデザインだなぁと感心してしまいました。


FullSizeRender


まずこの漢字とアルファベットの自然な一体感がうまいですね。異なる文字種を組み合わせなければならない日本語では、漢字と英字とか、漢字と平仮名とか、もともとの密度や曲線のルールが違う文字を同じ雰囲気に落とし込まければなりません。それが結構難しくて、時にはそれを諦めたりもするんですが、このロゴは「魔法」と「VIN」が同じルールの中で一体感を生み出しています。

特に「魔」の字は画数が多いため、VINという簡素な英字と比較するとどうしても浮いた存在になってしまいがちなんですが、このデザインでは曲線のカーブを利用して堅苦しい雰囲気を緩和させたり、「广」(マダレ)の最終画と「鬼」の左払いをつなげることで、漢字の可読性を損わずに文字を簡略化させる技が光っています。

同じことは「法」の字でもやっていて、煩雑になりがちな「氵」(サンズイ)や「ム」の部分をすごくデザイン的に処理していて上手い。文字としては読みやすいけれど、デザインとしてスッキリさせているんですねぇ。芸が細かいなぁ。

芸が細かいといれば「V」もいいですね。あえて谷になる部分を左に寄せているんですが、これ多分普通に中央に下ろしてしまうと、斜体のイメージがわかりにくくなって軽やかさが失われてしまうし、何よりこの文字からカーブの部分がなくなって、統一感のない雰囲気になってしまったでしょう。

書いていて気づいたけれど「N」もあえて「n」の形にすることで、Vと同じくカーブを入れられる部分を増やしているんですねぇ。ほんと、いろんな技を使って「魔法VIN」という文字を同じ雰囲気に落とし込んでいます。


あと、やっぱりロゴ作りで大切なのは、そのロゴが醸し出す全体のイメージが対象物にあっているかという部分。私はそれこそが一番重要だと思っているんですが、そういう意味でも良いロゴです。

金属的な光沢を感じさせるハイライトの入れ方と、ゆったりとした丸みを帯びたカーブのフォルム、そして太めのアウトラインに加えてそれと同じ色で立体感を持たせることで生み出した「重み」の表現。そこからこちらがイメージするのはまさにズングリした『魔法瓶』ですよね。

ちゃんと文字の下側に重みを感じさせるフォルムにしたり、魔の一画目や法の六画目のようなちょっとしたはみ出し部分はあえて小さくボタンのように表現しているのは、きっと魔法瓶っぽさの演出でしょう。


う〜ん。やっぱりこうして文字にしてみると、改めて色々と考えられているロゴだなと思いますし、私にとってもすごく勉強になりました。



最近、仕事の中でロゴ作りに関わらせていただく機会があり、つい街中でも様々な文字デザインやタイポグラフィを目で追ってしまうのですが、ポスターや広告といった目立つものだけではなく、こういったさり気ないデザインの中にもレベルの高いものが沢山ありますね。

そういったプロの仕事を探すのも見つけるのもとても面白かったので、今後もちょくちょくここで紹介してみようかなと思います。(需要は多分あんまりないと思うんですが…笑、でも自分が楽しいから良いのです!)

そんなロゴデザインのお話でした。

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