楽しい本作り生活

出版社で書籍デザイナーとして働きながら、本や漫画、映画や舞台など多くのものに元気をもらっています。このブログも訪れた方が少し元気になれるような、そんな楽しい記事を綴っています。

先日、文響社の公式Xアカウントが『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』という書籍についてポストしていました。

私も読んだことがあって、すごく面白かったので引用の形でRTさせて頂いたのですが、せっかくならばもう少し言葉を添えてみようかなと思って、この記事を書いています。


この本はタイトルの通り、現代人が抱えている人生の悩みに対して、歴史上の哲学者たちからの回答を紹介するという内容です。

目次を眺めると、沢山の悩み、それも誰にでも共感できるような「ありふれた悩み」が書かれています。そしてその悩み項目の下には、それぞれの問いに対して回答役を務める賢人たちの名前がズラーっと並んでいます。まずはこの回答者たちが超豪華。ブッダにソクラテス、フロイト、ニーチェ、アドラーといった哲学を知らなくても名前は聞いたことくらいはある超有名人たちです。すごい。

私などは特に「自分を他人と比べて落ち込んでしまう」「やりたいことはあるが、行動に移す勇気がない」「他人から認められたい・チヤホヤされたい」といった悩みに対して、「そうそう自分もめっちゃコレ!コレを偉人に聞いてみたかった!」となり、好きなページから順に読んでみました。


tetu



未読の方にご説明しておきたいのは、この本は決して有名人がやっている雑誌の人生相談のように「これでスッキリ解決!」というような気持ちの良い答えを提示してくれるとは限らないということです。「ん?それってどういうこと?」とすぐに飲み込みにくい回答の場合もありますし、時に難解な言葉も沢山使われます。

例えば「将来、食べていけるか不安」という悩みに対して、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの回答は「快楽は本来、活動(エネルゲイア)にほかならず、それ自身目的(テロス)なのである」というもの。

コレだけ読んでも、はあ?って感じで意味がわかりませんよね(笑)

でも、本書ではそんな答えを提示する前に、著者の小林昌平先生による丁寧な解説があるんです。そして、この解説が非常に非常に面白い。

『偉大な哲学者』と呼ばれる歴史上の賢人たちが、どういった思考の過程(仮説から実践まで)をふみ、生涯をかけて、どのような思想体系を築いていったのか。歴史的な背景とともに、そんな背骨の部分を紐解き、「なぜこの悩みに対して、その哲学者がこのように答えるのか」という部分をしっかりと説明してくれるのです。

そういう意味で、本書は問題解決としての要素だけでなく、「哲学」という学問がもつ歴史の壮大さ、テーマの広大さ、そして個々人の切り口の独創性などが非常によくわかり、こちらの知的好奇心も満たしてくれる面白さがありました。

また、どんなに偉大な人であっても、同じ人間である以上は私達と同じように迷い、悩み、そして苦しみながら、それでも「自分が考え抜いた末の結論はこうなのだ」という答えを手にしていった、というドラマ性にはやはり大きな感動を覚えます。

決して簡単な道のりではなかったろうに、彼らは考え続けて自分の中の理屈に到達したんだと。そして、その理論は彼らの死後、数十年、数百年…いや数千年経ってもなお、現代社会を生きる私達に対して知恵や勇気を与えて続けてくれるのだと。その事実自体が、とても興味深いなと思うのです。私は何よりその部分に勇気をもらいましたね。


この本を読むことで、何か今モヤモヤしていることに対して、解決のヒントが見つかるかもしれないし、そうでなくてもこういったアプローチがあるのか、そんな発想があったのかというひらめき、そして誰もがこれを感じているんだと、いう共感と勇気。そんなたくさんのものを心の中に持ち帰れる一冊です。


日常のお守り代わりとしても、哲学に対する入門書としても、そして人間という生命体に対する好奇心を満たしてくれるオモシロ本としても。おススメいたします!






コメント

コメントフォーム
記事の評価
  • リセット
  • リセット